宗派と用語

阿字観(あじかん)とは?真言宗に伝わる瞑想法の意味とやり方

お寺の瞑想というと坐禅を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、宗派によってさまざまな瞑想法が伝わっています。そのひとつが、真言宗に伝わる阿字観(あじかん)です。

この記事では、阿字観の意味と基本的な流れを、はじめての方にもわかるように紹介します。作法はお寺によって異なるので、実際に体験するときは、その日のご指導に従ってください。

阿字観とは

阿字観は、真言密教に伝わる瞑想法です。サンスクリット語の文字(梵字)の「阿(ア)」を観想する、つまり心に思い描くことから、この名前があります。

真言宗では、「阿」の字はすべてのものの始まりを表し、大日如来(だいにちにょらい)を象徴する文字とされています。阿字観は、その「阿」の字と向き合いながら、心を静め、自分と仏さまとのつながりを感じていく実践です。

阿字観で使うもの

阿字観では、多くの場合、次のような掛け軸を前にして座ります。

  • 月輪(がちりん):満月のような丸い円。澄んだ心を表すとされます
  • 蓮華(れんげ):蓮の花
  • 阿字:月輪の中に描かれた梵字の「阿」

この掛け軸を「阿字観本尊」と呼ぶこともあります。

阿字観の基本的な流れ

お寺によって細かい作法はちがいますが、大まかには次のような流れで行われることが多いです。

1. 座って、姿勢を整える

坐蒲や座布団に座り、背すじをのばします。足の組み方は、半跏坐(片足をもう一方のももにのせる)などが一般的ですが、はじめての方は無理のない座り方で大丈夫です。

2. 手を組む

手の組み方(印)は、お寺の指導に従います。法界定印に似た形で組むことが多いです。

3. 呼吸を整える

鼻からゆっくり呼吸し、吐く息を数えるなどして、心を落ち着けていきます。呼吸を数える方法は数息観のやり方でも紹介しています。

4. 阿字・月輪を見つめ、心に思い描く

掛け軸の月輪と阿字をしばらく見つめたあと、目を半分閉じ、心の中にその姿を思い描きます。慣れてくると、月輪が自分の胸の中にあるように、また大きく広がっていくように観想する、といった段階に進むこともあります。

5. ゆっくり終える

最後は、観想を静かに収め、体をほぐしてから立ち上がります。

阿字観と坐禅のちがい

阿字観 坐禅
伝わる宗派 真言宗 曹洞宗・臨済宗・黄檗宗など禅宗
心を向ける先 月輪・阿字を思い描く(観想) 姿勢と呼吸を整え、ただ座る など
道具 阿字観本尊の掛け軸 坐蒲
雰囲気 声を出して真言を唱える場面がある場合も 静かに座ることが中心

どちらが優れているということはありません。同じ「お寺の瞑想」でも、宗派ごとに向き合い方がちがう、と知っておくと、お寺めぐりがもっと楽しくなります。坐禅については坐禅のやり方をどうぞ。

はじめて阿字観を体験するときのポイント

  • 服装は、足を組みやすいゆったりしたものがおすすめです(服装と持ちもの)
  • 掛け軸の前では、合掌して一礼するなど、お寺の方に合わせましょう
  • 観想がうまくできなくても大丈夫。まずは呼吸を整え、静かに座ることから
  • 真言を唱える場面があっても、はじめての方は聞いているだけで構わない場合がほとんどです

よくある質問

阿字観は真言宗の信者でなくても体験できますか?

体験会を開いているお寺の多くは、宗派や信仰に関係なく参加を受け付けています。参加したからといって、入信をすすめられることは通常ありません。

阿字観と瞑想は同じものですか?

阿字観は、真言宗に伝わる瞑想法のひとつです。広い意味での瞑想に含まれますが、月輪や阿字を観想するという独自の方法があります。

家で阿字観をしてもいいですか?

基本的な呼吸や姿勢を整える練習は家でもできます。ただ、阿字観は本来、指導者のもとで教わる実践です。まずはお寺で体験してみるのがおすすめです。

どのくらいの時間、座りますか?

お寺によって異なりますが、説明を含めて1時間前後の体験会が多いようです。

まとめ

阿字観は、真言宗に伝わる瞑想法で、月輪の中の「阿」の字を見つめ、心に思い描きながら心を静めていきます。坐禅とはまたちがう、お寺ならではの瞑想の世界。機会があれば、ぜひ一度お寺で体験してみてください。